独立行政法人国立病院機構 刀根山病院

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筋ジストロフィー外来

当院ディシェンヌ型患者様の生存曲線推移

国立病院機構大阪刀根山医療センターでは、毎週火曜日と木曜日の午後に筋ジストロフィー専門外来を行っています。

対象としている疾患は、全ての筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型、福山型、顔面肩甲上腕型、肢帯型、筋強直性ジストロフィーなど)に加え、(先天性)ミオパチー、脊髄性筋萎縮症など多くの神経筋疾患です。

筋ジストロフィーの専門医療機関は少ないため、大阪府全域のほか兵庫県、京都府、奈良県、和歌山県など近畿一円の広い地域から、たくさんの患者様が受診されています。受診される患者様の年齢層は、乳児期から成人までと幅広く、神経内科医、小児神経科医が全員で診察しています。

筋ジストロフィーの様々な医療問題

筋ジストロフィーというと、治療法が無く医療効果が乏しい病気というイメージを持たれている方が多いですが、実際には医療の恩恵が最も大きい疾患の一つです。呼吸管理、心筋保護治療などの集学的治療により生命予後が大きく改善し、ステロイド治療やリハビリテーションは変形・拘縮予防や機能維持・生活レベルの改善に効果を挙げています。医療職だけで無く、児童指導員や臨床心理士、栄養士、歯科など多職種による支援、教育機関や患者会との連携で、患者様の活動範囲と生活質が向上するようサポートしています。

筋ジストロフィーでは、経過中に様々な医療課題が出現します。これらに対し予見的かつ多角的にアプローチすることが重要です。筋ジストロフィーで実施される主な治療には、ステロイドや呼吸管理、心筋障害治療などの合併症管理、整形外科的治療などがありますが、適切な時期から説明を受け、患者様・御家族の選択の下にタイミングを見計らって導入する必要があります。

効果的なリハビリテーションには、変形出現前からの関節可動域訓練、呼吸機能低下前からの呼吸理学療法の導入、適切な装具・自助具の処方、シーティングなどが重要です。体重管理や食育、嚥下機能に合わせた嚥下訓練、食形態の工夫、栄養管理や口腔ケアも大切です。心理支援、遺伝カウンセリング、教育・子育て支援、介護者の健康管理も重要な課題です。

筋ジストロフィー外来では、定期的な検査により、身体状況や各種機能の評価を行うほか、日常生活指導、ステロイド治療、呼吸管理・心筋保護治療などの合併症治療に加え、リハビリテーションなど集学的な診療を行います。整形外科的治療では、当院整形外科と専門施設で連携して対応しています。必要に応じ、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング、臨床心理士によるカウンセリング、指導員による子育て・福祉相談、支援学校による教育相談、看護外来での在宅療養指導、栄養管理室による栄養指導、患者会などを通じたピアサポートなどにも対応しています。

また、火曜日の午後は歯科外来での歯科学的問題のチェックも行っています。このように、あらゆる課題に多職種が連携して対応できることが専門医療機関の強みです。

関節可動域訓練の歩行能力維持効果

患者様の中には、症状が軽い時期は専門医療機関を受診する必要が無い・したくないと考える方もおられます。しかし、機能維持や変形を予防するための訓練は早期からの導入が重要です。特に、小児期発症の筋ジストロフィーでは、病初期からのリハビリテーションが必須です。

関節可動域維持訓練は変形・拘縮予防だけでなく、歩行可能期間の維持効果もあります。呼吸理学療法は、呼吸器感染の予防や、柔らかい肺を維持するために必須で、生命予後や生活の質に直結する重要なものです。当院では、ホームプログラムの指導に力を入れており、家庭や教育機関とも連携して継続的な訓練維持に努めています。

神経筋疾患では、進行に伴い呼吸管理や栄養管理、心不全治療を必要とする患者様が多数おられます。当院は神経筋疾患の呼吸管理のパイオニア的存在で、非侵襲的人工呼吸療法の積極的導入と在宅療養支援により、現在250名を越える患者様が人工呼吸療法を行いながら在宅で過ごしておられます。これらの患者様の中には、旅行や障害者スポーツ、文化活動を楽しまれている方もおられ、呼吸器を装着しても活動的な生活が可能な時代になっています。

心不全に対する心筋保護治療や、脊柱外科専門施設と連携した脊柱変形に対する外科治療も積極的に行っており、本邦の筋ジストロフィー医療をリードしています。

神経筋難病は、患者様の少ない稀少疾患がほとんどです。稀少疾患の医療が進歩するためには、臨床データの集積と患者様の臨床研究への協力が不可欠です。専門医療機関の受診は、質の高い医療を受けることだけでなく、データの集積を通じて医療レベルの向上に寄与する効果もあります。

当院では、様々な医療機関・研究機関との協力や、研究班活動を通じて臨床研究にも積極的に取り組みエビデンスの構築に努めています。一部の疾患では、新規治療の開発が臨床段階を迎えており、治験推進のための国際協調的な患者登録や臨床試験ネットワークが整備されつつあり、標準的医療の普及を目指したガイドラインの作成も進められています。

当院は、これらにおいても中心的な役割を果たしており、患者様と協力してこの領域の医療の進歩に貢献していきたいと努力しています。このため、受診されている患者様に、臨床研究や調査についてお願いをすることがあります。稀少疾患の医療向上は、患者様の協力無くしてはあり得ません。研究の主旨に賛同いただける場合は積極的にご参加いただきますようお願いします。

当院の受診を希望される患者さんには、現在かかりつけの医療機関がある場合は、地域医療連絡室を通じて、主治医の先生からの紹介をお願いしておりますが、紹介状等の準備が難しい場合は、毎週火曜日あるいは木曜日の午後の外来窓口に直接おいでください。

※紹介状がない場合、初診料とは別に選定療養費がかかります。

外来受診、選定療養費についてはこちらをご参照ください。

Remdyについて - http://www.remudy.jp/

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