患者様へ
呼吸器内科(各種肺疾患/感染症)
診療の特色
私たちが診療の対象としている疾患は、呼吸器系腫瘍以外のすべての呼吸器疾患です。慢性閉塞性肺疾患(肺気腫/慢性気管支炎など)、びまん性肺疾患(特発性間質性肺炎/サルコイドーシス/過敏性肺臓炎/膠原病肺疾患など)、気管支喘息、気管支拡張症、急性呼吸器感染症(細菌性肺炎、胸膜炎など)、慢性呼吸器感染症(非結核性抗酸菌症、肺結核後遺症、肺真菌症など)、気胸、およびこれらが原因となる急性・慢性呼吸不全の診断および治療を行います。
主な対象疾患
慢性閉塞性肺疾患
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主症状は体動時の息切れです。長期にわたる喫煙等による末梢の気道閉塞に加え、最近の私たちの研究により、中枢の気道である声門閉塞が息切れに関与する可能性が明らかとなりました。さらに、病状の進行に伴い痩せ(やせ)などの合併症を併発してくることが知られており、COPDを全身性疾患として捉えていく必要があります。当院では、胸部CT、精密肺機能検査や運動負荷心肺機能検査による生理機能検査を行います。各種薬物療法、進行した患者様では在宅酸素療法、在宅NIPPV(非侵襲的陽圧呼吸療法)、在宅ハイフローセラピー(2022年より保険収載)の導入も行います。当科の特徴として、疾患に限らず息切れの症状を訴えられた患者様には、実際に運動して頂き、その病態を調べる運動負荷心肺機能検査を行っております。当院でその検査を始めた1989年から2022年4月までの検査件数はのべ7174例になりますが、これまで検査に伴う大きな合併症はなく、安心して受けて頂ける検査と考えております。その豊富な症例数をもとに、各患者様の病態を運動生理学的に多角的に評価し、その病態に適した呼吸リハビリテーションを行っております。最近では、十分な呼息により体動時の息切れ改善が期待できることから呼気圧負荷トレーニングも取り入れております。各患者様の多様な息切れが軽減でき、個々の患者さんにあわせて生活の質を向上させるように努めております。
»»慢性閉塞性肺疾患に関するQ&A
»»2022年11月12日、第32回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会(幕張)にて、当院呼吸器内科、三木啓資先生が優秀演題賞を受賞されました。
»»2023年7月、当院呼吸器内科、三木啓資先生の論文が受理されました。
びまん性肺疾患
特発性間質性肺炎、肺線維症、過敏性肺臓炎、サルコイドーシス、薬剤性肺障害、膠原病肺疾患など、肺全体に炎症が起こる様々な病気の総称です。これらの病気の多くは、診断の確定が難しく、また治療法も確立されているとはいえません。胸部高分解能CT、気管支内視鏡検査(気管支肺胞洗浄、気管支内視鏡下肺生検)、症例によっては外科的肺生検(胸腔鏡下肺生検)を行い診断します。その結果に基づいて、薬物療法(ニンテダニブ、ピルフェニドンなど)、酸素療法、呼吸リハビリテーションを行います。
»»間質性肺炎に関するQ&A
»»2023年4月、大阪大学医学部附属病院との共同研究で2つの論文がアクセプトされました。
気管支喘息
気管支喘息、咳喘息、慢性咳嗽の患者様について、呼吸機能検査、高分解能CT、気道過敏性試験などをおこない、正確な病状診断につとめ、治療をおこなっています。気管支喘息は、気道の慢性疾患であり、発作がない時でも、気道炎症は継続しており、潜在的に病状が進行し、不可逆な気流閉塞をきたすことがあるため、適切な治療を継続する必要があります。また、喘息として治療を受けていても症状が良くならない患者様の中には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)あるいは、気管支拡張症などの他の呼吸器疾患を合併している場合もあり、病態に合わせて加療をおこないます。近年、気管支喘息の薬物治療は吸入療法が主体となっています。当院では、ピークフローメーター測定と喘息日誌を用いた自己管理、吸入指導の徹底をおこなっています。さらに重症喘息に対する分子標的治療薬(オマリズマブ、メポリズマブ、ベンラリズマブ、デュピルマブ)や、気管支サーモプラスティという新規治療法(2015年より保険収載)を導入し、よりよい喘息治療を目指しています。
»»気管支サーモプラスティ
呼吸器感染症
一般細菌による肺炎、非定型肺炎については、ガイドラインを参考に個々の患者様の状態に合わせて適切な診断・治療を心がけています。
非結核性抗酸菌症
非結核性抗酸菌症(非定型抗酸菌症)の中で肺 Mycobacterium avium complex(MAC)症は、近年、中年期以降の女性を中心に増加しています。結核菌と同じ抗酸菌の仲間ではありますが、その性質は全く異なりヒトからヒトへの感染はないとされています。MAC症をはじめとする非結核性抗酸菌症は、未だ診断・治療法が確立されておらず、治療に難渋する症例も少なからずあります。当院で開発した抗酸菌症血清診断を用いて非結核性抗酸菌感染の補助診断も実施しています。当科では、豊富な症例をもとにMAC症の診断と治療に関する研究を積極的に行っています。難治性肺MAC症の患者さんには、リポソーム化アミカシン吸入療法(2021年より保険収載)も積極的に導入しております。
»»非結核性抗酸菌症に関するQ&A
»»非結核性抗酸菌症について
»»2023年4月、新しい非結核性抗酸菌症検査法を開発しました。
»»2023年10月、第32回Pneumo Forumで福島清春先生が優秀賞を受賞されました。
結核
2019年3月に結核病棟を閉鎖したことに伴い、排菌状態の患者様の受け入れは出来なくなりましたが、結核を疑われる患者様については、これまで通りに検査等を実施し、診断の確定を行います。 また、骨関節結核については、陰圧管理された個室で手術を実施しています。当院の検査室では結核菌の塗抹検査は外来受診日の当日、遺伝子増幅(TRC)検査は外来受診日の翌日までに結果が判明するため、結核症の迅速な診断が可能です。
»»1953年〜1990年当院で行われた実験的結核性空洞に関する研究
慢性呼吸不全
様々な呼吸器疾患により呼吸不全に至った患者様に対して、個々の患者様の病態と生活にあわせた呼吸リハビリテーションを行い、在宅酸素療法を行っています。現在、当科では約250名の患者様が在宅酸素療法を受けておられ、非侵襲的陽圧呼吸療法を在宅で受けておられる方も約60名にのぼります。慢性呼吸不全の患者様には、「少しでも楽に、安心して、在宅でより長く生活できる」ことを目標に、地域の訪問看護ステーション・医師会と連携した在宅ケアにも積極的に取り組んでいます。今後とも、さらに病診連携や地域の訪問看護ステーションなどとのネットワーク作りを進めていきたいと考えています。当院で在宅酸素療法を受けているCOPD患者さんの生命予後は、50%生存期間が8.9年と世界最長に達していると思われます。また、結核後遺症も、80%以上が10年以上生存されています。このことより、在宅酸素療法は生命予後を改善することより、如何に生活を豊かに過ごすかが目標になっています。
»»肺機能検査をより身近に
スタッフ紹介
呼吸器内科部長・臨床研究部抗酸菌研究室室長
木田 博
医学博士 |
臨床領域別研究室長・臨床研究部呼吸器学研究室室長
三木 啓資
博士・専門医 医学博士 |
呼吸器集中治療科医長
辻野 和之
博士・専門医 医学博士 |
呼吸器内科医師・睡眠センター医師
橋本 尚子
呼吸器内科医師
松木 隆典
博士・専門医 日本内科学会 総合内科専門医 |
呼吸器内科医師
新居 卓朗
博士・専門医 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医 |
呼吸器内科医師
原 侑紀
博士・専門医 日本内科学会 総合内科専門医 |
専攻医
長田 由佳
博士・専門医
|
呼吸器内科医師(非常勤)
藤川 健弥
博士・専門医 日本結核病学会 結核・抗酸菌症指導医 |
日本内科学会総合内科専門医 4名(指導医 4名)
日本呼吸器学会呼吸器専門医 4名(指導医 3名)
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医 2名(指導医 1名)
日本結核病学会 結核・抗酸菌症認定医 1名(指導医 1名)
日本アレルギー学会 アレルギー専門医 1名
身体障害者福祉法指定医(呼吸器機能障害) 3名
病棟
A病棟4階 60床
RICU 4床
診療を希望される患者様へ
呼吸器内科では、初めて(あるいは久しぶりに)当院の診察を受けられる患者さんを対象として、平日(月~金)午前に初診専用外来を開設しています。せき、たん、息切れ、胸痛、血痰などの自覚症状を有する方、あるいは胸部レントゲンで異常を指摘された方などが対象となります。
原則として、かかりつけの先生にご紹介を頂き、胸部レントゲンなどの資料をお持ちになって当院へお越しください。(過去の検査結果やレントゲン写真は診療の参考になります)
日によっては、初診の患者さんが多数集中することがあり、予想以上にお待ちいただくことがあります。できるだけ円滑に診療を行うよう努力をしておりますので、あらかじめご了承ください。
また、多くの患者さんがかかりつけ医の御紹介により連日新しく受診されます。当院での診断・治療の結果、病状が安定された場合には、主治医が患者さんと御相談の上で、その後の治療をかかりつけの先生にお願いしております。もちろん、病状が不安定で呼吸器専門医が引き続き治療を担当する必要がある場合には、当院の外来にて治療を継続させていただきます。
セカンドオピニオン
呼吸器系腫瘍以外の呼吸器疾患に関するセカンドオピニオンも受け付けております。呼吸器内科部長・医長が担当いたします。お申込みは、ホームページ左側のセカンドオピニオンの項をご覧ください。
ご紹介を頂く医療機関の先生方へ
紹介状・資料をご用意いただき、地域ネットワークセンターを通じて予約をお願いいたします。明らかに入院が必要と見込まれる患者様につきましては、病床管理上あらかじめ当科に直接電話で御連絡を頂けると助かります。
夜間休日に関しましては、原則として初診救急は受け付けておりません。初診あるいは数年来院のない患者さんにつきましては、救急病院の受診を御考慮下さい。当院に定期的に通院している患者さんにつきましては、あらかじめ当直医と御相談の上で、受診を御指示下さい。なお当直医が呼吸器内科医とは限らない点をご留意ください。
また、当院の内科は呼吸器内科と神経内科の単科です。循環器、消化器などの合併疾患については専門的対応が困難な状況にありますので、重篤な合併症のある方につきましては、担当医に予めご相談頂けると幸いです。
症例の選択、御不明の点などがありましたら、地域医療相談室へ御遠慮なくご連絡いただければ対応させていただきます。
診療実績
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
入院患者(主病名*) | 延べ867名 | 延べ915名 | 延べ974名 | 延べ909名 | 延べ950名 | 延べ690名 | 延べ593名 | 延べ654名 |
非結核性抗酸菌症 | 206名 | 206名 | 219名 | 174名 | 232名 | 174名 | 144名 | 138名 |
肺真菌症 | 19名 | 12名 | 39名 | 29名 | 25名 | 19名 | 15名 | 13名 |
その他の呼吸器感染症 | 78名 | 88名 | 98名 | 95名 | 82名 | 51名 | 37名 | 30名 |
間質性肺炎 | 153名 | 199名 | 236名 | 195名 | 232名 | 176名 | 254名 | 175名 |
その他のびまん性肺疾患 | 17名 | 30名 | 10名 | 25名 | 14名 | 16名 | 17名 | 35名 |
慢性閉塞性肺疾患 | 119名 | 136名 | 120名 | 128名 | 121名 | 66名 | 53名 | 86名 |
気管支拡張症 | 56名 | 45名 | 71名 | 78名 | 31名 | 43名 | 32名 | 46名 |
気管支喘息 | 36名 | 47名 | 33名 | 42名 | 44名 | 28名 | 18名 | 14名 |
気胸 | 10名 | 7名 | 12名 | 6名 | 17名 | 6名 | 6名 | 6名 |
肺結核後遺症 | 43名 | 50名 | 33名 | 32名 | 33名 | 17名 | 7名 | 6名 |
その他 | 130名 | 95名 | 103名 | 105名 | 119名 | 63名 | 63名 | 53名 |
2023年 | |
入院患者(主病名*) | 延べ741名 |
非結核性抗酸菌症 | 165名 |
肺真菌症 | 19名 |
その他の呼吸器感染症 | 58名 |
間質性肺炎 | 208名 |
その他のびまん性肺疾患 | 20名 |
慢性閉塞性肺疾患 | 87名 |
慢性気管支炎/気管支拡張症 | 52名 |
気管支喘息 | 14名 |
気胸 | 8名 |
関節リウマチ† | 38名 |
その他 | 72名 |
*感染増悪の場合は基礎肺疾患名
†関節リウマチ合併肺疾患、関節リウマチ治療中の呼吸器感染症を含む
呼吸生理機能検査・リハビリテーション 件数
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
モストグラフ | 488件 | 485件 | 597件 | 750件 | 774件 | 923件 | 915件 | 428件 | 257件 | 208件 |
FeNO | NA | 211件 | 492件 | 677件 | 737件 | 888件 | 849件 | 519件 | 349件 | 260件 |
アストグラフ | 40件 | 36件 | 38件 | 47件 | 38件 | 57件 | 67件 | 49件 | 5件 | 7件 |
運度負荷心肺機能 | 85件 | 86件 | 141件 | 143件 | 133件 | 173件 | 144件 | 177件 | 181件 | 128件 |
呼吸器リハビリテーション | 142件 | 189件 | 234件 | 305件 | 268件 | 366件 | 392件 | 288件 | 345件 | 312件 |
2023年 | |
モストグラフ | 242件 |
FeNO | 376件 |
アストグラフ | 7件 |
運度負荷心肺機能 | 160件 |
呼吸器リハビリテーション | 367件 |
業績
当科では、患者さんの診療に全力を尽くすとともに、北摂最大の呼吸器内科部門としての責任を果たすため、臨床研究や新しい薬の治験を積極的に行っています。他施設と共同研究も行っています。当科で行った臨床研究や新しい知見については、積極的に学会や専門雑誌で発表を行っています。
以下は当科の医師が発表した学会発表、学術論文の一覧です。
後期レジデント募集
当科では、呼吸器腫瘍内科とともに常勤医、専攻医を募集しています。私たちといっしょに働いてみたいという方は、是非、当院までご連絡下さい。
詳しくは採用情報の項目をご参照下さい。