肺がんセンター
我が国において、死亡原因のトップはがんであり、中でも肺がんは臓器別で一番多いがんです。(男性では1位 女性では2位)一方でがんと診断された患者さんの中で肺がんは男性で3位、女性で4位であり、手術で取り切れる患者さんは比較的少なく、抗がん剤や放射線治療など総合的な治療が必要とされるがんの一つです。また、近年免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬の新たな治療薬が次々と開発され、治療選択の幅が広がってきましたが、逆にそれぞれの患者さんに適切と考えられる治療法の選択の判断が難しくなってきました。
当院は1917年に創立された日本で最初の公立の呼吸器専門施設であり、1980年代から40年近くにわたり、6000例以上の肺がんの診療に携わってきました。毎年新規に200-300例という北摂地域随一の多くの肺がん患者さんの診療を行っています(診療実績)。これまでの肺がんに対する診断・治療成績を評価され肺がんに特化した病院として、大阪府からは2010年に、がん診療拠点病院(肺がん)の指定を受けています。
毎年新しい治療方法が登場する現状を踏まえ、各部門が従来よりさらに緊密に連携し総合的に多くの肺がんの患者さんの診療にあたるため、2023年1月より新たに肺がんセンターを設置いたしました。今後も北摂の肺がん診療の拠点として、引き続き肺がん患者さんの治療にあたるとともに、地域の医療機関との連携、患者さんへの情報提供・相談体制の充実、肺がんの新たな治療法の開発などに努めてまいります。
病院長挨拶
肺がんセンターの開設にあたって
放射線診断・病理診断・遺伝子診断・薬物治療・外科治療・放射線治療・がん免疫療法・緩和医療などあらゆる分野で肺がん診療は急速に進歩しています。当院には専門医(内科・放射線科・外科・麻酔科・病理など)や認定看護師(化学療法・緩和ケアなど)が多数在籍しております。多職種連携のチーム医療を円滑に行い、最新の肺がん治療をリアルタイムに患者さんに届けるために肺がんセンターを開設しました。職員一同で患者さんに寄り添う医療を提供しながら、肺がん治療を安心して受けていただけるよう努力する所存です。
2023年1月 院長 奥村明之進
センター長挨拶
2023年1月より、大阪刀根山医療センターでは、肺がん診療のさらなる向上・推進のため"肺がんセンター"を開設いたしました。我が国の肺がんによる死亡数は、年間75,000人(2020年)を超え、がんによる死亡数の中で第一位です。そう遠くない日に皆さまの身近な方々が当センターで肺がん治療を受ける日がやってくるかもしれません。当院の肺がんの延べ入院患者数は、呼吸器腫瘍内科、呼吸器外科を合わせて年間約15,000人にのぼり、肺がん患者さんが手術、化学療法、放射線療法などの治療をスムーズに、かつ適切に受けていただくために、多職種が参加する肺がんカンファレンスを毎週開催しています。また、患者さんのあらゆる不安を取り除き、満足する治療を受けられるように、医師や看護師はもとより、薬剤師、リハビリテーション、栄養、地域ネットワークセンター、臨床心理士などの多職種が有機的に関わって、きめ細かく治療を支えています。患者さんの病状や生活環境は一人ひとり異なりますが、"肺がんセンター"はすべての患者さんが安心してより専門的な肺がん治療を受けられるように、安全で良質な医療環境を提供いたします。
2023年1月 肺がんセンター長(副院長) 竹内 幸康
肺がんセンター紹介動画
肺がんセンターにおける診療イメージ
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当院肺がんセンターの特長
1.呼吸器専門施設の経験豊富なスタッフが肺がん診療にあたります
肺がんの手術数は、北摂の病院の中では大阪大学病院と並んでトップクラスであり、経験豊かな呼吸器外科医が内視鏡手術を中心とした、体に優しくかつ安全な手術を行っています(呼吸器外科)。センター長の竹内副院長は関西においてはやくから胸腔鏡手術を行った呼吸器外科医です。また、抗がん剤を中心とした薬物療法も近年大幅に進歩するとともにとても複雑になっており、府内でも有数の治療経験を有する腫瘍内科医が最先端の情報を踏まえて診療にあたっています(呼吸器腫瘍内科)。
当肺がんセンターは標準治療(現在の保険診療の範囲内での最良の治療)の提供を原則としていますが、1つとは限らないため肺がんセンターのスタッフ(外科医・内科医・薬剤師・看護師など)が集まるカンファレンス(検討会)ですべての患者さんについて治療方針を検討します。それを踏まえて、担当医がそれぞれの患者さんやご家族と十分に相談して、バランスのとれた最適な治療を考えていきます。
また、標準治療を提供することはとても大切なことですが、それだけでは医療の進歩は望めません。私たちは、患者さんのご協力をいただいて積極的に治験・臨床試験を行い、肺がん医療の発展に寄与したいと考えています。もちろん研究については当院等の倫理委員会で安全性と科学的・社会的妥当性が認められたもののみ実施いたします(治験・臨床研究)。
2.高度なチーム医療で肺がん患者さんを支えていきます
肺がん患者さんの治療においては、手術や抗がん剤だけが治療ではありません。
患者さんに寄り添う看護師、複雑な薬物治療を支援する専門の薬剤師(薬剤部)、肺がんに伴う諸症状の緩和を図る緩和ケアチーム(緩和ケアチーム)、精神的な側面もサポートする心理療法、生活の質を保つために必要ながんリハビリテーション(がんリハ)、社会的なサポートや就労相談を行うがん診療支援センター(がん診療支援センター)、在宅診療・訪問看護・緩和ケア病棟(ホスピス)など地域の他の施設と緊密に連携を取りあう地域ネットワークセンター(地域ネットワーク)など、多くの専門スタッフが力を合わせて肺がん患者さんを支えていきます。
3.検診、診断から治療まで一貫した体制をとっています
豊中市が実施している肺がん検診に令和3年度から当センターの医師が全面的に協力を行い、肺がんの早期発見に努めています。
また、豊中市はもちろん、北摂他市町の方も、かかりつけ医の先生からご紹介をいただき、特に肺がんを強く疑われる患者さんについてはできるだけ速やかに初回受診ができるようにしています。
手術や抗がん剤治療に際しては、必要十分な期間を入院で対応します。A棟6階病棟60床を肺がんセンターとして運用を行っています。外来で対応可能となれば、すみやかに外来診療に移行します。現在では、大半の方が外来通院で抗がん剤治療を受けており、電動リクライニングチェアを備えた外来化学療法室にはがん治療に精通した看護師や薬剤師などのスタッフが治療のサポートにあたります。
化学療法室
放射線治療も、平成26年に更新した新しい装置を用い抗がん剤との同時治療も当院で実施することができます(放射線科 - 放射線治療)。
肺がんの経過観察中の患者さんは、当院での継続的な診療はもちろんのこと、かかりつけ医の先生とも密に連絡を取り合い、患者さんの病状の管理をしています。
状態があまり良くない患者さんが在宅などで療養される場合も、在宅診療医や訪問看護ステーションと密接な連携を取り、円滑に在宅療養や近隣の緩和ケア病棟(ホスピス)入院に移行できるようにしています。
- ■日本呼吸器学会認定施設
- ■日本呼吸器外科学会専門医制度基幹施設
- ■日本臨床腫瘍学会認定研修施設
- ■日本がん治療認定医機構認定研修施設
- ■日本呼吸器内視鏡学会専門医制度認定施設
- ■日本緩和医療学会認定研修施設
- ■日本病理学会研修認定施設
初回の受診方法について
かかりつけ医の先生から当院の地域ネットワークセンターを通じて受診を予約していただくことになります。受診の際には、かかりつけ医の先生にご用意いただく当院宛の診療情報提供書(紹介状)が必要です。患者さんからの直接の受診は受け付けておりません。
当肺がんセンターは肺がんに関する各部門が集まって総合的な診療を行う名称で、実際の診療は患者さんの病状により、呼吸器外科と呼吸器(腫瘍)内科のいずれかが主となり担当いたします。
◎ 地域の医療機関の皆様へ
受診予約・お問い合わせは地域ネットワークセンター(TEL:06-6853-2001(代))へお願いいたします(地域ネットワークセンター)。
肺がん診療に関するご相談・サポート
肺がんの診断、治療にあたり、直接の診断・治療に関わるご不安はもちろんですが、その他にも、どれほどのお金がかかるのだろうかという治療費のご不安、あるいは今の仕事が続けられるのだろうかという就業ヘのご不安など、様々な社会的な問題に直面されると思います。
がん診療支援センターではそのような患者さんやご家族の方のご不安を少しでも減らせるように積極的に支援を行っています。(がん診療支援センター)
肺がんのセカンドオピニオンについて
肺がんの診断・治療に関するセカンドオピニオンを行っております(有料)。当センターの医師(呼吸器外科もしくは呼吸器腫瘍内科の部長・医長)が対応いたします(セカンドオピニオン)。現在の診療内容に関する苦情あるいは転院希望を受けるものではありませんのでご承知おきください。
肺がん検診について
豊中市の肺がん市民検診は、令和3年4月から集団検診から地域の医療機関での個別検診に移行し、すでに令和3年度だけでも以前の4倍以上となる1万人以上の豊中市民が受検しておられます(豊中市 健診・がん検診のご案内)。当院は豊中市に全面的に協力し、豊中市民の検診写真はすべて当院のセンターの医師が二次読影を行い、肺がんの早期発見を目指しています。令和3年度だけでもこの検診により、数名の方が、無症状で肺がんが発見され当院で速やかに手術を行うことができました。また、近隣の池田市・豊能郡・川西市などの肺がん検診を担当する医療機関とも積極的に情報交換を行い、肺がんの早期の診断治療を目指しています。
各医療機関での肺がん検診で精査が必要となった場合は、各医療機関から当院へ受診予約を取っていただくことになります。なお、人間ドックで胸部の精査となった方を対象に、直接当院の受診予約できるサービスを、一部の施設を対象に開始しています。
肺がんの治験・臨床試験について
当院は大阪府内でも有数の肺がん患者さんの診療を担当しています。当院では、新たな肺がんの標準治療の構築を図るため、国内の多くの施設あるいは製薬企業と協力し、患者さんのご協力をいただいて、肺がんの化学療法(抗がん剤・免疫チェックポイント阻害剤)に関する新しい薬剤あるいは組み合わせの治験を実施しております。治験や臨床試験については、十分にご説明させていただいた上で患者さんとご家族の同意をいただいた場合のみに実施します。治験・臨床試験の依頼に同意されなかった場合でも、最適と考えられる標準治療を行いますのでご安心ください。
肺がんの診断後に行う最初の抗がん剤治療での新規薬剤の治験、また最初の治療の効果が低下して治療内容の変更を行う患者さんに対する新規薬剤の治験も実施しています(肺がんの治験・臨床研究)。治験に参加するためにはいくつかの条件を満たしていることが必要であり、また治験治療を開始するまでは時間がかかります。治験をご希望の患者さんは、現在診療を担当されている医師を通じてご連絡ください。
院内がん登録について
「がん登録等の推進に関する法律」によって、全国の医療機関はがんと診断された人のデータを都道府県知事に届け出ることが義務化されました。この法律に基づき、当院では院内がん登録を行なっています。院内がん登録とは、病院におけるがん医療の状況を的確に把握するため、当院におけるがん患者について、詳細な治療の状況を含む情報を収集し、院内がん登録データベースに記録し、及び保存することです。院内がん登録データベースにおける情報の活用により、がん医療の質の向上、専門的ながん医療を提供する医療機関の実態把握、がん患者及びその家族等の医療機関の選択、行政でのがん対策の充実などが図られます。また、当院では院内がん登録によって集積したデータを病院内での研究に提供することがあります。(院内がん登録数)
なお、この法律では、がん登録にあたって患者さんやご家族の同意は必要ないとされています。もちろん、貴重なデータを提供していただいた患者さんのプライバシーや権利が侵害されることがないように、個人情報の取扱いやデータの処理方法について専門的な研修を受けた担当者が、最大限の注意を払ってがん登録の業務を行います。
院内がん登録は、がん登録等の推進に関する法律(平成二十五年法律第百十一号)により、院内がん登録の実施に係る指針(厚生労働省告示第四百七十号)に即して行うこととされています。これらのデータは現在毎年、全国の施設におけるがん医療の実態把握のために、提出元が保持する対応表が無い限り個人が識別できない状態のデータとして国立がん研究センターに提出されていますが、その二次的な利用については拒否(オプトアウト)の機会が提供されています。
オプトアウトの申出を受けた際には、当院のデータベースに記録するとともに、国立がん研究センターと連携して、二次利用を行わないようにいたします。手続きに際し、以下の点についてご理解のほどお願いします。
- オプトアウトは、申出をいただいた当院から国立がん研究センターに提出されたデータ分のみです。他院に受診されてその施設からのデータ提出分も拒否をされる場合は、当該医療機関へもお申し出ください。
- 現在行っている解析課題は国立がん研究センターのホームページで閲覧可能です。
- 国立がん研究センターで解析のために研究者等にデータを提供する際には提出元と結びつけられる情報は削除します。そのため、この状態になって提供済みのデータについては、追跡が不可能なため削除できません。
- オプトアウトを申出されたことによる、患者さんの診療に影響することはありません。
- データは、当院で行われた診療内容ですので、その内容については、主治医に直接お尋ねください。
院内がん登録の制度自体について、ご不明な点などありましたら、国立がん研究センターが運営するホームページ「がん情報サービス」をご確認ください。また、必要に応じて問い合わせフォームもご活用ください。ただし、国立がん研究センターで保有している院内がん登録は番号のみで管理しており、お問い合わせをいただいても診療やデータの内容はわかりません。また、氏名などの個人の患者さんが判別できる情報を保持しておりませんので、削除などの対応については、実際に診療を受けた病院を通して伝える必要がありますのでご注意ください。
皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。
肺がんセンター医師一覧
- 呼吸器腫瘍内科
- 内田 純二(呼吸器腫瘍内科部長)
- 森 雅秀(副センター長、統括診療部長、がん相談支援センター長)
- 矢野 幸洋
- 赤澤 結貴
- 岩堀 幸太
- 三橋 靖大
- 西島 良介
- 呼吸器外科
- 竹内 幸康(センター長、副院長、呼吸器外科部長)
- 奥村 明之進(院長)
- 大和 寛幸
- 平岩 七望